2012年にGoogle Chromeがローンチされてから、プッシュ通知はデジタル・ファーストビジネスの重要なツールとされてきました。先日Chrome 80の開発が発表されましたが、さらに来月、プッシュ通知に関する大きなアップデートが実施されます。今月初め、Googleはブログにて「静かな通知の許諾」を発表しました。
このアップデートはユーザーのネット閲覧体験をより快適なものとするためで、通知許諾画面がしつこく表示されない様に改変するものです。通知許諾画面は、ユーザーがサイトに降り立った瞬間に表示される傾向にあり、ユーザーがこのサイトが自分にとって本当に有益かどうかを判断する前に通知の可否を判断させられています。では、「静かなUI」では具体的に何が変わるのでしょうか。
この機能があなたのサイトのユーザーやマーケティング戦略にどの様に影響するかを考える前に、このアップデートで具体的に何が変わるのかを見ていきましょう。Chromeに限らずとも、この流れは多くのブラウザで起きています。Google ChromeとFirefoxを例にとって見ていきましょう。
Google Chrome
静かなUIのビフォー・アフター
アップデート前:
ユーザーがサイトに降り立つと、デフォルトの通知許諾画面が表示されます。これは「許可」もしくは「ブロック」を押すか、xボタンを押さない限り消えません。「許可」を押すと、このユーザーは自動的にプッシュ通知購読者として認識されます。「ブロック」をクリックすると、許諾画面は消えて、二度と表示されません。あとから購読するには鍵アイコンをクリックし、「許可」を選択してサイトを再度読み込まなくてはいけません。
アップデート後:
「静かなUI」が適用されると、新規ユーザーがウェブサイトに降り立ち、後述するいくつかの基準を満たした後も、デフォルトの許諾画面は表示されません。代わりに、このUIを初めてみるユーザーには、閲覧体験を邪魔しない、イン・プロダクトのヘルプ・ダイアログが表示されます。
静かなUIはモバイル・デスクトップの両方に適用されます。
Source: Chrome Official Blog
Mozilla Firefox
同様に、Mozilla Firefox70&72のアップデートでも、閲覧体験を邪魔しない様、許諾画面の変更が行われました。これにより、プッシュ通知をより信頼できるコミュニケーション・チャネルとすることを狙います。
アップデート前:
ユーザーがサイトを訪れると、デフォルトの許諾画面が表示されます。これは「通知を許可する」もしくは「後で」を押すか、サイトを閉じない限り消えません。「通知を許可する」を押すと、このユーザーは自動的にプッシュ通知購読者として認識されます。許可しなかった場合、許諾画面は次回訪問時にまた表示されます。ドロップダウンから、「許可しない」ボタンを選択することも可能です。これを選択すると、許諾画面は二度と表示されません。xのビフォー・アフターはこちら。
アップデート後:
アップデート適用後には、これまでの様なポップアップ形式の許諾画面は表示されません。ユーザーが自発的にアドレスバー上のアイコンをクリックすることで、通知を許諾できます。通知アイコンは振動して表示されるため、ユーザーの注意を微かに引きます。また、新しい許諾画面では「後で」のCTAボタンが「許可しない」に変更されます。つまり、通知に興味のないユーザーは、毎回「後で」ボタンを押す必要がなくなります。
静かなUIが表示されるユーザーは?
静かなUIが適用されるかどうかは、ユーザーとサイトによります。Googleによると、下記の3つの方法で割り振られます。
- マニュアル割り振り:ユーザーが、設定から自分で変更できます。設定>サイトの設定>通知から、「静かなメッセージングを使用」を選択できます。
- 許諾画面でブロックを選択し続けているユーザー:許諾画面でブロックを選択し続けているユーザーが、静かなUIの対象ユーザーとして自動的に割り振られます。
- 許諾率の低いウェブサイト:静かなUIは、許諾率が極端に低いウェブサイトに自動的に適用され、許諾率が改善されると適用から外されます。
マーケティングに及ぼす影響は?
- 許諾率は下がってしまいますか?
はい、許諾率は下がるでしょう。しかしながら、反射的に「ブロック」を押す新規ユーザーも減るため、より質の高いリードが取れる様になるでしょう。
- 既存の購読者にも影響がでますか?
いいえ、既存の購読者には影響ありません。すでにプッシュ通知を購読しているユーザーは、これまで通り通知を受け取れます。
- プッシュ通知の貢献度に影響はありますか?
はい、アップデート後の購読者は、より質の高い購読者になりますので、貢献度は徐々に増すことが期待できます。
懸念されるマーケターも多いと思いますが、私たちはこのアップデートが、マーケティング全体には良い影響をもたらすと考えています。下記が期待される効果です。
- ユーザーの閲覧体験の改善
- プッシュ通知のCTR改善
- 反射的な「ブロック」の削減
- ユーザー貢献度の改善
何をしたら良いか?
このアップデートに伴う重要な課題は、プッシュ通知をより文脈的に正しく利用する、ということです。マーケターはプッシュ通知の許諾を、よりタイムリーに表示させる必要があります。Insiderではそれを実現するいくつかのスマートな手段を用意しています。
- イベントベースの許諾画面トリガー:静かなUIの主目的は、シームレスな閲覧体験です。あなたのウェブサイトが、静かなUIの対象となるのを防ぐことが重要です。ユーザーの特定の行動、たとえば、購入、カート投入、ウィッシュリストの利用等、により、パーソナライズされた2段階の許諾画面をトリガーすることができます。これにより、より関連性の高いユーザーの購読許可を獲得することができます。
- ベルアイコン:ベルアイコンは、サイト上にフロートする、インタラクティブなプッシュ通知アシスタントボタンです。ベルアイコンをクリックすると、許諾画面を表示させたり、許諾方法を指示する画面を表示させたりすることができます。
- リマインド・テンプレート:静かなUIに割り当てられたユーザーは、通知を許可したくても、その方法を知らないかもしれません。ユーザーが通知を許可するのを手助けする、リマインド・テンプレートを利用してみてください。このテンプレートは、既に通知をブロックしてしまったユーザーにも有効です。
- 許諾画面を遅れて表示させる:多くのユーザーは、サイトに降り立ってすぐに許諾を求められると、反射的にブロックを選択します。こうした懸念から、いつもブロックを選択するユーザーは、自動的に静かなUIに割り当てられます。これを回避するたったひとつの方法は「ユーザー体験を改善する」ことです。
許諾画面を「サイト滞在がxを経過したユーザー」にだけ表示してみましょう。これにより、反射的なブロックを避け、サイトのユーザー体験が改善されます。 - 段階許諾テンプレート:実はChromeは、2段階の許諾画面をサポートしています。2段階許諾を利用すると、より適したタイミングでプッシュ通知許諾を求めることができ、ユーザー体験を改善できます。ユーザーが一度目の許可ボタンを押すと、通知を許可する方法を指示したポップアップが表示されます。
#QuieterIsBetter: 許諾獲得までの道
Insiderは、あなたのウェブサイトがより多くのプッシュ通知購読者を獲得し、ユーザー体験を改善するための方法を常に模索しています。そんな私たちは、静かなUIは、許諾率やCTRを増加し、シームレスな閲覧体験に 繋がると信じています。
静かなUIにより、最初は許諾率が影響を受けるかもしれません。しかし、プッシュ通知の購読キャンセルは確実に減り、結果的には相殺されるはずです。つまり、あなたのサイトからセールや新商品の発売といった情報を、本当に欲している、ロイヤル・ユーザーと、より良い関係が構築でき、最終的にはCVRが上がる筈です。
新たなプロダクト・アップデートも、乞うご期待!